マニュアルに頼らない電話接客。超一流のお客様対応から学んだ信頼関係を築くサービスとは?

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あなたはお客様への対応がなかなかうまくいかずに、どうしていいのかわからなくなってしまったことはありませんか?

お客様との信頼関係を良好にしようと思い、接客マニュアルや、ビジネスマナー本などで接客術やサービスについての勉強をした人もいると思います。 ところが、その方法をその通り実行してみても、良くなるどころか悪化してしまったという悲しい経験をした人もいるかもしれません。 もし、あなたが接客や対応で悩んでいるとしたら、安心してください。

それは決してあなただけではありません。接客のシーンにおいて、日々さまざまなお客様の対応をしなければなりません。

きちんとお客様に対応したつもりでも、逆にクレームを受けてしまう、信頼関係をこじらせてしまうなど、なかなかマニュアル通りにはいかないものなのです。
マニュアル頼りになってしまうと逆にお客様にとってまずい対応になってしまうこともあるのです。

ではマニュアルに頼らないのであれば、どうずればよいのでしょうか?

それは「期待を超えるサービスを提供する」ことです。

本当にお客様の立場になって対応すること、それはお客様のことを理解し、お客様の立場になって考えた時に、価値観を共有することです。
それを積み重ねることで、信頼関係をグッと強めることができます。

では具体的にどのようなことを実践すればお客様との信頼関係をあげることができるのでしょうか?

接客業で14年間、のべ16万人以上のお客様に対応してきた超一流コミュニケーターの網野麻理さんの実体験に基づいて導かれた「お客様の対応において本当に大切なこと」の数々をこれからご紹介しましょう。

「お客様に喜ばれる仕事をしたい」
「お客様からありがとうと言われたい」
「どんなお客様とも、どんな場面でも臨機応変に対応したい」

そんなあなたの頑張りたい気持ちをぜひ現場に活かしてください!

それでは、早速その方法をご紹介していきます!

はじめに

第一章「期待を超えるサービス」の基本
 究極のサービスは「お客様に気づかれない」サービス
 自己満足のサービス、顧客志向のサービス
 相手の価値観を共有する技術
 「あなただからお願いしたい」と言わせる
 どんな問い合わせにも「No」と言わない
 お客様を〝一人ぼっち〟にさせない
 同じことは言わせない
 成功かどうかは、お客様が決める
 言われたとおりだけでは終わらせない
 だから、マニュアルに頼らない

 

はじめに

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本書を手に取ってくださり、ありがとうございます。
もしあなたが接客サービスやセールスなどに関わっている方なら、こんなことを考えたことはありませんか?

「お客様や得意先(担当者)と関係を深めたい」
「相手の要望に精一杯応えて、最高のパフォーマンスをしたい」
「やっぱりあなたにお願いしてよかった、と思われたい」
 
これらの考えの延長線上には、「相手に喜んでいただきたい」「次の仕事につなげたい」「困ったときに助けてもらいたい」「応援してもらいたい」といったエッセンスがあると思います。

とはいえ、お客様やクライアント担当者も人間です。ウマの合う人、合わない人は誰でもいるものです。
 
それでも、大事なお客様だから、クライアントだから、うまくやっていきたい。そんな気持ちを持って、あなたも日々、努力しておられると思います。
 
この本は、
「どんな相手とも信頼関係を築いて、相手の期待以上に応えるためのコミュニケーションの極意」
をまとめた本です。
 
私はクレジットカード会社のJCBで、コミュニケーターに始まり、スーパーバイザー、チーフトレーナーとして、14年間、のべ16万人以上のお客様の接客に携わってきました。お客様からのお問い合わせやご依頼に対し、正確かつ迅速に対応し、ご要望を叶えていくのが仕事です。
 
ただ、接客といっても、対面接客ではなく、電話での接客です。

対面接客であれば、お客様の表情や態度などの視覚情報も取り入れながらおもてなしを提供できるのですが、電話での接客は、声や話し方などの聴覚情報だけの世界です。声と耳だけでお客様の表情を汲み取るコミュニケーション能力が求められます。
 
さらに、私が対応していたお客様は、クレジットカードの中でも最上級ランクのカードを持つプレミアム会員の方々。言われたことだけでなく、付加価値をつけた「期待以上」に応えるサービスが求められます。
 
声と耳だけで、最富裕層のお客様に120%満足していただく世界―。

この世界で長年鍛えられてきた、コミュニケーション能力・サービス術は、退職して独立したあとも、電話はもちろん、対面での打ち合わせやセールス、人間関係の構築など、幅広いところでとても役立っています。
 
私が活用している、この〝期待以上〟に応えるコミュニケーション能力・サービス術には、いくつかの重要な心得と作法があります。私が14年間で培ってきた経験・知恵・知識を通して、その心得と作法をあなたに少しでもお伝えできればと思い、筆をとりました。
 
お客様の「期待以上」に応えるために絶対欠かせない、1つのキーワードがあります。
それは、自分とお客様との「信頼関係」です。

「今さら、何を言っているの?」
「そんなこと、わかっている」
 
もしかしたら、がっかりされた方もいるかもしれません。
でも、このキーワードには深い意味があります。
 
私も最初は、お客様の期待以上に応えていれば、お客様から信頼されると思っていました。しかし、経験を重ねていく中で、順番が逆であることに気づきました。
 
お客様に信頼され、求められる自分になって初めて、お客様の期待以上に応えられるのです。
この本をお読みになれば、その意味をご理解いただけると思います。
 
この本に取り上げているスキルはいずれも、テレアポ電話営業はもちろん、セールス対面接客、クレーム対応といったビジネスシーンはもちろん、人間関係に悩んでいる方、コミュニケーションが苦手な方にもお役に立てると思います。
 
第1章では、お客様や相手から、期待以上に応えるためのサービスに必要不可欠な考え方、実践法をまとめています。
 
冒頭にお伝えした、商品やサービスに付加価値をつけるとはどういうことか。それをコミュニケーションという形の中でどのように提供していくかについて事例をあげながら解説しています。他社と差別化し、顧客の囲い込みやリピート率を上げていくための方法としても参考になると思います。
 
第2章は、お客様との絶対的な信頼関係を築くコミュニケーション術について書いています。日頃私がコミュニケーションを取るときに、気をつけていることや心掛けていることはもちろん、相手との関係性を深める方法についてお伝えしています。すでに築いている関係をより強いつながりに深めていきたい。そんな悩みをお持ちの方にも参考にしていただける内容にまとめました。
 
第3章では、電話の世界ならではの接客メソッドをご紹介しています。電話でお客様からの信頼を得るためには、電話口での人間の深層心理を理解している必要があります。顔の見えない声と耳だけの世界でのコミュニケーションの極意を知れば、あなたの対面のコミュニケーション能力をさらに高めることができるでしょう。
 
第4章では、付加価値を提供するためのおもてなしの心を育てる環境についてまとめています。一流のサービスを育むには、環境が大きな影響を与えます。接客サービスにおけるチームワークの大切さは、私自身が上司、部下の両方の立場で実感しています。特に組織のマネジメントや人材育成に携わる方にお読みいただければ幸いです。
 
最後の第5章では、人のタイプに応じ、コミュニケーションをどのように変えたらいいのかについて解説しています。相手によってコミュニケーションをアレンジできれば、信頼関係も築きやすくなります。私が接客をしてきたお客様の実例を交えながら、言ってはいけない言葉、言わなければいけない言葉など具体的なメソッドをご紹介しているので、より実践的にご活用いただける章になっています。
 
ここで、この本を読み進めるにあたり、あなたにお願いがあります。
この本に書かれていることは、誰もができることであり、決して特別なことだと思わないでください。

私はどちらかといえば、人と関わることよりも一人でいることが好きな内向的なタイプです。顧客志向も高くない社員でした。
 
しかし、多くの場数を踏み、コミュニケーションの取り方を学ぶうちに、お客様との関係性もどんどん変わっていきました。
 
人はコミュニケーションを取らずして生きていくことはできません。そうであれば、一人でも多くの人と良い関係を築いていけるほうが、楽しく生きられると思いませんか。
 
この本がそんなあなたの一助になれたら、著者としてこれほどうれしいことはありません。
どうか、あなたの人生が、信頼の絆であふれる毎日となりますように。
 
なお、この本でご紹介していることは、当時私が、JCBのコミュニケーター時代に経験したことであり、現在のJCBのサービス内容とは、異なる点があることをあらかじめご承知おきください。

 

第1章
「期待を超えるサービス」の基本

究極のサービスは「お客様に気づかれない」サービス

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『一杯の紅茶から見えるプラスαサービス術』

「サービスとは、何ですか?」と聞かれたら、あなたは何と答えますか?
どこからどこまでがサービスなのか、人によって感じ方も違いますし、提供する側となれば、なおさら難しいでしょう。私は、お客様に対し常に期待を超えるプラスαの応対ができることだと考えています。
 
私が仕事の打ち合わせなどでよく使うラウンジのスタッフの方は、私の名前や過去に注文したお茶の種類を覚えています。
 
紅茶の種類だけでもものすごい数があるのですが、その中でも私の好みを覚え、毎回それを出してくれるので、ティーカップにお茶がなくなりそうになると、こちらからお願いしなくても注いでくれます。カップが空になることはなく、常に充たされている状態でくつろぐことができます。
 
ただ、高級ホテルとしては、ここまでのことは当たり前かもしれません。このホテルがすばらしいのは、お客様のお茶の飲み方を見ている点です。
 
カップいっぱいに注がれているお茶を飲むのと、残り少ないお茶を飲み干そうとしているのとでは、それぞれ飲み方が違います。
 
それを遠くから観察し、お客様のお茶がなくなった絶妙なタイミングで注ぎに来てくれるのです。お茶の量を確認しに席の近くを歩かれても落ち着きません。
 
お客様がくつろげるよう、最大の気配りをしながらサービスを提供する。これこそ、期待を超えるサービスと言えます。

『期待していないサービスを提供する』

私が従事していた電話の世界で言えば、たとえば、お客様のお誕生日に「おめでとうございます」とお祝いが言えるのは、期待どおりのサービスです。
 
しかし、お孫様のお誕生日にも「おめでとうございます」と言えたとしたら、期待を超えるサービスになります。
 
お客様からお孫様のプレゼントのご相談を承り、その履歴を控えておけば、1年後に「お孫様のお誕生日、もうそろそろですね」とお伝えすることができます。
 
自分が大切にしている人や物を一緒に大切にしてもらったと実感したとき、人はとてもうれしくなるものです。

さらに、自分が伝えたことを長い間ずっと覚えていてくれたということも、期待を超える心遣いにつながります。

この「期待していないサービスの提供」は、お客様との心の距離をぐっと近づけてくれます。
お客様の記憶に残るサービスとは、お客様のことをよく知り、それをさりげなく提供するという1つひとつのサービスの積み重ねなのです。

『「相手に気づかれない」という究極サービス』

さてここまでは、よく言われる期待を超えるサービスのお話です。しかし私は、お客様と信頼を築くためには、もっと深いサービスが必要だと考えています。
 
それをまさに実践している、あるお寿司屋さんがあります。そのお寿司屋さんはお客様がカウンターに座ったときに、必ずチェックすることがあるそうです。

それは、「お客様の利き手がどちらか」ということ。
お茶やお通しを出した瞬間に、お客様が右利きなのか左利きなのかを確認し、ネタを出すときの位置をそれに応じて変えているのだそうです。
 
つまり、お客様がネタを取りやすいように、右利きなら右から、左利きなら左から取りやすいようにネタを並べていくということです。

一見、お客様は、その気遣いに気づかないかもしれません。何かを提供し、「ありがとう」と言ってもらえるようなサービスではないのかもしれません。しかし、このような気遣いこそ、お客様との信頼を積み重ねていく上では大切なのです。

私もお客様の声を聞き、ご年輩だと感じた場合には、ゆっくり話したり、大きめの声でわかりやすいように話をします。
 
急いでいるお客様にはきびきびと。疲れているお客様には簡潔に。それぞれのお客様に合わせて応対を変えていきます。それは、お客様は気づいていないことかもしれません。しかし、なぜか居心地がいい。なぜか安心する。言葉では説明のつかない右脳で感じる心地良さを提供することができます。

「どうしたら期待に沿えるか」「どうしたら期待以上のサービスが提供できるか」を追求することも、もちろん大切です。
 
しかし、本当に大切なことは、相手に「ありがとう」と言ってもらえないことに関しても、常に相手を思い、どれだけ行動できるか、なのです。
 
見返りを気にせずに、相手のことを考えて対応できているかどうか。
日の目を浴びないところでも相手を考える気持ちこそ、究極のサービスと言えます。

極上のサービスポイント
相手に気づかれないサービスこそ、ゆるぎない信頼関係を築く。

 

自己満足のサービス、顧客志向のサービス

『情報が正しければいいわけではない』

お客様のためだと思っていることが、実は自分の思い込みだということはよくあります。かつての私がそうでした。

ある日、お客様から予約されているホテルの件でお問い合わせがあり、ホテルの最寄り駅をご案内したところ、こんなやりとりになりました。

お客様「あそこのホテルは、A駅からのほうが近いんじゃないの?」
「いいえ、最寄りの駅は、B駅です」

お客様「でも、前回行ったときに、A駅を使った気がするけど……」
「ですが、B駅が最寄駅です」

お客様「うん、わかったよ。じゃあB駅から行ってみるよ」
「はい。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
 
しかし、私の応対を聞いていた先輩から、すぐに呼び出されました。
「今の応対、良くなかったね」
「え? 最寄り駅、間違えていましたか?」

「あなたは今、お客様を言い負かしたみたいに聞こえたよ。私たちの仕事はお客様と勝ち負けを競う仕事ではないし、お客様のことを思ったら他のご案内の仕方もできたはずだよね」
 
確かに最寄り駅は2つありました。実際どちらの駅から行ってもさほど変わりはありません。私はホテルのガイドブックにB駅が最寄り駅と記載があったため、それをそのままご案内しました。しかし、A駅も近いことをお客様はご存じだったのでしょう。最終的にお客様に折れていただくという終わり方になりました。

私は、「正しい情報を届けなければ」という気持ちと、「ガイドブックに記載されているから正しいはずだ」という思い込みで、自分の主張を押し通してしまったのです。
 
そのときは、お客様のことは考えておらず、「情報を正確に届ける」というコミュニケーターとしての役割を果たすことに夢中になっていました。しかしそれは、自分の持っている知識をただ押し付けただけの応対です。自分の立場や役割を果たすためだけに、仕事をしていたのです。

本来であれば、お客様が違う駅をおっしゃった時点で、考えられることはたくさんありました。「電車は何線を使うのか」「どちらからいらっしゃるのか」「前と同じ駅のほうが迷わず行けるのではないか」……。さまざまな視点でお客様の立場に立ち、自分から歩み寄っていくことが必要でした。それなのに私は、お客様に折れていただき、自分の主張を通し、自己満足に浸ってしまったのです。

『正解は、相手の中にある』

一流のおもてなしであるかどうかは、一瞬で見極められてしまいます。

だからこそ、自分の中に正解を持つのではなく、常に謙虚にお客様に歩み寄る心が必要です。傲慢に自分の仕事しか考えない人間だと思われた瞬間、お客様の心は離れてしまいます。
 
また、自分がお客様のためだと思うことが、本当にためになっているかを時折見直すことも必要です。B駅をご紹介すること自体が間違っていたわけではありません。しかし、そのお客様に応じた応対であったかと言えば、答えはNOです。
 
答えは、お客様が持っている。
この心掛けがあるかどうかが、一流と二流の別れ道となるのです。

極上のサービスポイント
そのサービスは、本当にお客様のためのものかを見直す。

 

相手の価値観を共有する技術

『最富裕層と価値観を共有する方法』

誰でも自分の価値観を認めてもらえたら、うれしいものです。

たとえば、あなたが好きな映画について友達に話したとします。その後、友達が同じ映画を観に行き、「あなたの言うとおり、すごく良かったよ」と言ってくれたらうれしいと思うのではないでしょうか。
 
お客様との関係も、価値観をいかに共有できるかが、とても大切です。
私の相手は、生活環境が違う最富裕層のお客様でしたが、アプローチを変えれば、価値観を共有することはできました。
 
海外に行かれるお客様が多く、私が行ったことのないような場所をたくさんご存じでした。旅行に行かれたあとはご報告のお電話をいただくこともありました。

その時間は、私にとって未知の世界を知るひととき。海外旅行の経験の少ない私は、とにかくお客様からうかがう別世界に想像を巡らし、たくさんの土地に興味を持てる機会でした。

そして、お話の終わりには、必ずひと言付け加えていました。
「また教えてください」「また聞かせてください」「もっと詳しく知りたいと思いました」と自分の感じた思いをそのままお伝えしていたのです。
 
そうしているうちに、別のご旅行の際も、再びご報告の連絡をいただけるようになったのです。時には、お土産まで送っていただいたこともありました。
 
お客様の価値観を積極的に取り込んでいくことで、関係性を深めていくのです。さらに、お話をうかがううちに、私も旅行の疑似体験をしたり、知らない土地に興味を抱いたりしながら、価値観を広げていくことにもつながりました。

『次回につなげる会話術』

お客様との別れ際によく使う言葉に、「次回もお待ちしております」というごあいさつがあります。電話でもよく使うごあいさつですが、最後の決まり文句としてお伝えしているだけでは意味がありません。
 
本当に電話が欲しければ、かけてもらう理由をつくることが必要です。
お客様が「あそこに電話をしたい」と思えるような環境をつくらない限り、単なるクロージングのごあいさつになってしまいます。

私は、「また教えてあげよう」「また驚かせよう」「今度は感想を聞いてみよう」など、お客様から情報発信をしていただけるような環境をつくり、自分が受信側に回ることを心掛けていました。そこで、価値観を共有させていただき心を通わすのです。

ある日、他の用件でお電話をくださったお客様から「急ぎではないけれど」と、あるレストランのことを聞かれました。新しいレストランだったため情報がなく、すぐにはご案内ができませんでしたが、そんなときも、「次にお電話をいただくときまでに調べておきますので、お手すきの際、またご連絡いただけますか」と言って次回につなげました。

つまり、接触する機会を積極的につくるのです。このような積み重ねが、自分の指名を増やし、価値観を共有する機会を増やしてくれます。

『価値観を共有する2つのステップ』

VIPのお客様の感覚、価値観を身につけ、一流のサービスを提供する。それは、マニュアルやネットの情報だけでは得られないものです。
 
実際に体感することが、自分の視点を大きく変え、お客様の価値観を共有できるようになる秘訣です。

あるお客様は、大相撲が大好きな方でした。しかし、私は力士の名前すらあげられないような素人レベル。そこで、お客様との信頼関係を築くために、私は、相撲の魅力や楽しさをお聞きして、「今度私も観に行ってみます。次回感想をご報告いたします」と、実際に大相撲観戦をする機会をつくったのです。

実際に観戦してみると、その迫力はテレビで見るものとは全く違い、お客様の言う相撲の魅力を直接肌で感じることができました。

次のお電話をいただいた際、さっそくその感想をお伝えしたところ、とても喜んでくださり、私たちの関係性はさらに深くなっていきました。

この例は極端かもしれませんが、お客様との価値観を共有し、一流のサービスを提供するためには、一流の環境に身を置くこと、実際に体感することが一番の近道です。

価値観の共有の第一歩は、相手の価値観に興味を持ち、それを引き出す。そして、実際に体験する。

この2つのステップが、より深い信頼関係を築きあげていくのです。

極上のサービスポイント
関係性を深めるために、相手とできるだけ同じ体験をする。

 

「あなただからお願いしたい」と言わせる

『ニーズとサービスのギャップを埋める』

フェイスブックや社内に多くのファンがいて、応援される人がいます。ファンをつくることは大変なことです。コミュニケータとしての役割は、いくつかあります。
 
1つ目はお客様のニーズに対し、正確で迅速に対応する。お客様が何を望んでいるのか的確に判断し、お待たせせずに回答することです。

カードについてのお問い合わせであれば、間違いのない情報を回答しなければなりませんし、お花の手配であれば、お客様の用途や好みをうかがってご要望に沿ったものを手配していかなければなりません。

また、お客様の声を社内に還元することも大事な役割です。

お客様がサービスについてどのように感じているかを伝えていくのはもちろんのこと、お客様が言葉には表さなかった心情も汲み取り、もっとこうするべきなのではないか、といった提案を社内に還元します。そして、その声をサービスの見直しや商品の新規開発などに取り入れていくのです。

カード会社は、お客様との一番近い接点がコールセンターであり、私たちコミュニケーターがお客様と社内とのパイプ役となっていました。

フロント部隊(コールセンターや窓口など、直接お客様との接点がある部署)とバック部隊(企画の立案や商品開発など、直接お客様との接点がない部署)がうまく連携プレーを取ることで、お客様のニーズとサービスのギャップを埋め、お客様により高い満足感を感じていただけるよう努めました。

『あなたがいるから、JCBを使う』
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あらゆる役割の中でも、最も重要な役割が「JCBのファンをつくる」ことでした。

数ある会社の中から選ばれ、メインカードとしてお持ちいただくためには、JCBを好きになり、ファンになっていただかなければなりません。

「カードが使えるお店がたくさんある」「キャンペーンが魅力的」「CMのキャラクターが好き」など、ファンになっていただく要素は人それぞれです。

そんな中でも、「○○さんがいるからJCBを使う」と思っていただくことがお客様の最前線にいるコミュニケーターの最大の役割でした。

その役割を果たしていることを確認できるのが、「クレジットカードはたくさん持っているけど、いつも○○さんが一生懸命やってくれるから、ついJCBを使っちゃうんだよね」と言っていただけることです。

コミュニケーターがお客様一人ひとりと信頼関係を築くことが、JCBのファンを増やしていくことにつながると実感できる瞬間でもあります。

『ファン獲得のチャンス』

以前私が応対したお客様に、メインカードがJCBではないお客様がいらっしゃいました。ある日、そのお客様より、トップシーズン真っ只中に某人気ホテルを予約したいというオファーをいただきました。いきさつをうかがうと、いつも利用しているカード会社では全く予約が取れずに断られ、ダメ元でJCBに電話をしたということでした。

私は、何としてでも予約を取りたいという気持ちでいっぱいでした。他のカード会社からJCBをメインカードに変えていただく絶好のチャンスだったからです。

しかし想像どおり、ホテルの予約には苦戦を強いられました。どこのルートからも空室がなく予約ができないのです。
そこで、私はお客様に提案しました。

「本日の段階では満室となっており、予約ができませんでした。宿泊予定日が近づけば、キャンセルが出る可能性がございます。ご宿泊のお日にちギリギリまでホテルの空室を確認させていただけないでしょうか」

万が一キャンセルが出なかったことを考え、近くに別のホテルの予約も入れました。その日から、私は時間を見つけてはホテルにキャンセルが出ていないか確認の電話を入れる毎日が始まりました。

そして、宿泊日間近、幸運にもホテルにキャンセルが出て、無事にお客様が希望していたホテルの予約が取れたのです。

その後、そのお客様はJCBをメインカードにしてくださいました。時間はかかりましたが、ファンを獲得するには、あきらめずに徹底的にお客様のために尽くすことが大切だと身をもって感じた出来事です(現在は、より多くのお客様に対応できるように、お預かりするサービスは行われていません)。

『自分が一番のファンになる』

私が、なぜここまで粘ることができたのかを考えてみると、コミュニケーターの役割であること以上に、案内する私自身が、JCBのファンだったからです。

私はお客様のために頑張っているJCBが大好きでした。ファンを増やしたいと思う気持ちは、自分がいいと思うものをすすめたいという気持ちから生まれます。

もし、自分の会社のファンを増やしたいと思ったら、まずは自分がファンになってください。

そして、自分のファンをつくりたいと思ったら、まずは自分の好きなところをたくさんつくる。自分の扱っている商品を好きになる。
その愛があって初めて、自分の情熱がお客様に伝わります。

極上のサービスポイント
ファンを増やすためには、まずは自分が一番のファンになる。

 

どんな問い合わせにも「NO」と言わない

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『ビックリするような要望』

もし、あなたが友人から無理なお願いをされたとします。
あなたなら、どうしますか?

そのお願いが、助けてあげたくてもできないことだったとしても、友人のことを大切に思っていれば、「どうしてそんなお願いをしてきたのか」「他に助ける方法はないのか」など、真意を確かめたり、解決策を探すでしょう。

これは、コミュニケーターの世界も同じです。お客様から内心ビックリするようなご要望をいただくこともありました。たとえば、家や車をクレジットカードで買いたいというお客様。すでに完売になっているミュージカルを一番前の席で観たいというお客様。カードを自宅に忘れたので、今すぐ空港に届けてほしいというお客様。

お相手はいずれも、カード会社にとって最高峰のプレミアムカードのお客様です。
どんな要望でもお応えできるよう、私たちは1つひとつの問い合わせに、できる限りの手を尽くしました。

ルールとして対応できないこと(たとえば、個人情報を開示してほしいという問い合わせなど)以外は、NOと言わないことを目指していました。

それは、せっかく私たちを頼ってお電話をいただいたのに、期待を裏切りたくないという気持ちがあるからです。

そして、お客様を理解し、真のニーズを汲み取ることができれば、たとえ難しいご要望であったとしても、もっと他にふさわしい代案や提案ができるという自信があったからです。

『無理なお願いに応える秘策』

こんなことがありました。お客様のご要望は、「夏休みに、京都の川床料理を楽しみたい」というものでした。鴨川沿いの老舗の料亭で、その時季だけの特別料理を提供してもらえるという人気のプランです。お客様は、「外国のお客様をお連れするので、京都の川床で懐石料理を体験させてあげたい」とのことでした。

さっそく手配しようとしたのですが、第一希望のお店はすでに予約で満席。鴨川沿いのお店に何軒かあたったものの、夏休み期間の休前日ということもあり、どこのお店も満席でした。こんなとき、「満席でお取りできませんでした」とは言いません。

まずは、お客様の「真のご要望は何だろう?」と考えます。お客様は、川床料理を選択されたのですが、真のご要望は、外国の方に日本の風物詩を体験させることなのではないかと考えるわけです。
その真のご要望を充たせるプランの追求に頭を切り替えます。

「京都の老舗旅館なら、日本庭園を見ながらお食事できる場所があるかもしれない」
「舞妓さんや芸者さんと過ごす時間を体験できるかもしれない」

など、川床料理では体験できないことも、この旅館なら違う楽しみを提供できるかもしれない、そう考えてご提案していきます。

今思い返してみると、もしかしたら、ご依頼いただいたとおりの成約率はそんなに高くなかったかもしれません。ですが、お客様が何を望んでいるかを汲み取り、それを充たせる代案をつくることができる。それが強みであり、最高のおもてなしであるとあらためて実感しています。

私たちは、誰かが発した言葉に対し、ついその言葉自体に対する回答を用意してしまいがちです。しかし、その言葉の裏側には、真の要望があり、相手がたまたま口にした言葉が、無理難題に聞こえているだけかもしれません。

どうしたらその要望を叶えられるのかを考えていくことと、真の要望を汲み取る力を身につけることが一流のおもてなしにつながるのです。

極上のサービスポイント
無理なお願いでも簡単に断らず、真の要望を汲み取って代案を提案する。

 

お客様を〝一人ぼっち〟にさせない

『できる範囲ギリギリまで寄り添う』

あなたは、どこかに問い合わせをしたときに「わかりません」「知りません」「担当ではありません」と言われ、突き放されたように感じたことがありますか?

困っているとき、助けてほしいとき、頼みの綱だと思って託したとき―。突然道を塞がれ、心細くなる経験は誰にでもあるでしょう。

私も、先日あるコールセンターに電話をかけたときに、同じような経験をしました。問い合わせ窓口の電話番号がわからず、あちこち調べ、やっとつながった先で事情を話すと、「うちの担当ではありません」と言われました。

少しでも情報がほしくて、ワラをもすがる思いだった私は「担当の部署はどちらでしょうか。どこに連絡すればいいですか」と聞いたところ「そのようなことは弊社ではわかりかねます」と迷惑そうに言われてしまいました。

「これ以上は対応しません」という雰囲気だったので、仕方なく電話を切ったのですが、心細い気持ちになりました。

私がコミュニケーターだったときに意識していたのは、「お客様を〝一人ぼっち〟にさせない」ということです。
自分のできる範囲のギリギリまで、お客様に寄り添うことを心掛けるのです。

お問い合わせに答えられないときやご要望にお応えできないときも、決して一方的にお断りせず、「今できることは何か?」を考え、自分が解決できなくても、お客様が次の一歩を踏み出すまでは必ず伴走し、次に送り出すことを意識しました。

『うろ覚えの雑誌に出ていたカバンが欲しい』

以前、お客様からこんなお問い合わせをいただきました。

「雑誌で見た婦人用のカバンを探しているが、どうしても見つからず困っている」というものでした。

「JCBから送ってもらった雑誌なのか、他社の雑誌なのかわからなくて。どのような種類の雑誌だったか、いつ発行されたのかもわからない。すでに雑誌は手元にないし、時間も経過してしまったのだけれど、やっぱりあのカバンが欲しくなった」

お客様は申し訳なさそうにおっしゃいました。ご自身でも相当探されたようなのですが、見つけることができず、最後の望みとして私たちのデスクにお電話をされたのです。

カバンを特定することは、とても難しい状況でした。インターネットがない時代に特定のものを検索すること自体難しかったのに加え、お客様の記憶も定かではなかったからです。

しかし、「わかりません」とは言いたくありませんでした。無理を承知の上でお電話をしてくださったお客様です。最後の望みをかけてお電話をしてくださったのだと思い、できる範囲のことはやろうと思いました。

まずはカバンの特徴と雑誌を見た時期をうかがい、お客様にお送りしたJCBの月刊誌を調べました。お送りした雑誌1年分、12冊の中の通販ページを1ページずつ見ていき、それらしいページに付箋を貼っていきました。

そして、お客様に詳細を説明し、気になるページをFAXしてご確認していただく、という地道な作業をしましたが、該当するカバンは見つかりませんでした。

しかし、負けず嫌いの私は、何か方法がないかを考えました。カバンを探すことはできなくても、お客様が思い出すヒントを見つけることはできるかもしれない。そう思った私は、お客様にたくさん質問をしてみました。

「お客様、もう一度思い出してみてください。その雑誌をご覧になった場所は、ご自宅でしたか?」「それを見たときに誰かとご一緒でしたか?それともお一人でしたか?」「雑誌には、カバンの写真のほか、何か記事は書かれていましたか?」「その雑誌は、特集記事が掲載されていたりしましたか?」

お客様が考えるペースに合わせ、次々と質問を投げかけると、お客様は次第に断片的な記憶を思い出し始めたのです。

「雑誌を見ていた場所は、娘の家だったかもしれない」「確か雑誌を見ていたときに、娘がいたわ。娘に雑誌の写真を見せ、会話したのを思い出しました」「見ていた雑誌は、私の雑誌ではなく、娘が買った雑誌だったかもしれない」

お客様は、すぐにお嬢様に連絡をとり、雑誌を探してもらうことにするとおっしゃいました。

最終的にカバンが見つかったかどうかはわかりませんが、お客様は最後に、私にこうおっしゃってくださいました。

「一人では、ここまでたどり着けなかった。本当にありがとう」
初めに電話をされてきた不安そうな声とは違う、明るくてスッキリとした声に変わっていました。

『ネガティブな結果もポジティブな感情で終わらせる』

お客様が望んでいることすべてに応えられるわけではありません。わからないときも、お断りしなければならないときもあります。

しかし、大切にしていたのは、「今できる範囲の最大限のことは何か」を考えることです。そして、お客様が次の行動に移れるよう一緒に寄り添い、伴走するのです。

信頼関係を築いていくためには、ご希望に応えられることがたくさんあることだけではなく、むしろご希望に応えられないときこそ丁寧に、いかに寄り添えるかが問われます。

そのような意識で臨んでいれば、ネガティブな結果もポジティブな感情で終わらせることができ、次もまた電話をしようと思っていただけるのです。

極上のサービスポイント
お客様の気持ちに寄り添い、次のアクションに移るまで伴走する。

 

同じことは言わせない

『「理解してくれている」という感覚』

世の中には、固定客がついて長く続くお店と、すぐにつぶれていくお店があります。あなたにも、行きつけのレストランや美容室、かかりつけのドクターや毎回指名するマッサージ師など、いつも通っているお気に入りのお店があるのではないでしょうか。

「お気に入り」の理由は、家から近いとか、コストパフォーマンスがいいなど、それぞれだと思いますが、大きな理由として「自分のことを理解してくれている」ことがあげられるのではないでしょうか。

自分の髪質や毛の生え方、カットの仕方やカラーの色など、熟知してくれている美容師さんがいるとしたら、安心して任せることができるはずです。

毎回説明をしなくても、「いつもと同じで」と伝えるだけで、自分の希望どおりに仕上げてくれるなら、こんなに楽なことはありません。

自分を理解してくれている存在があることで、そこに自分の居場所があるように感じることができ、またそこに行きたいという気持ちが芽生えてくるものです。

この「理解してくれている」という感覚は、お客様の心をつかむ大きな要素です。
そこで必要となるのが、日ごろからのお客様の情報収集です。

『好みやスタイルを徹底的に記録する』

お客様からいただくお問い合わせの中で多いのが旅行の手配です。旅行会社にある既成のツアーではなく、オリジナルツアーを組んでほしいというご要望も少なくありません。

日程や場所だけ指定され、あとは「お任せで」と言われます。どうしたら喜んでいただけるか。コミュニケーターとして力が試されるときです。

たとえば、夏休みの旅行の手配を承ったとします。私たちは過去に手配したお客様のご旅行記録を調べます。毎年同じ場所に行き、同じホテルを利用されている方なのか、それとも毎年私たちがプランをつくり、新たな場所をご提案する方なのか。

過去の履歴を確認しながら、今年のプランを考えます。手配記録には、予約をした先の詳細はもちろんのこと、お客様がおっしゃったリクエストや配慮すべき内容が事細かく記入されています。具体的には、

・飛行機より新幹線を好まれる。
・航空会社は○○会社で、ファーストクラス。
・席は窓側ではなく、通路側のグリーン車。
・移動時間に余裕を持つ。電車乗り換え時の時間間隔は長めに設定。
・お食事は必ず部屋食で。海鮮がお好き。そばアレルギーをお持ち。
・夜景の見える海側高層階のお部屋をリクエスト。
・ご同伴者は、○○○○様(○○歳)。
・ご回答のお電話は必ず勤務先へ。
・勤務先のご担当者○○様へご伝言可能。

など、一度言われた内容は同じことを聞かなくて済むように、細かく記録しました。

『徹底的に「お客様マニア」になる』

旅行履歴やリクエストされたことだけではなく、お客様の趣味嗜好、性格、価値観、家族構成、生活スタイルなども記憶します。

お客様は何を大切にされる方なのか、どのような価値観を持ち、何を優先される方なのか。日ごろの会話から、お客様像をイメージしていきます。

お孫様のお話をよくされるお客様には、お子様も楽しむことのできるホテルやレジャー施設に寄れるようなプランを盛り込みます。ご年配のご夫婦の記念日旅行だとわかれば、期間限定でしか乗れない列車の手配や、その年にしか開放していない特別な部屋をご用意したりします。いつも仕事がお忙しく、まとまった時間がとれないお客様には、非日常的な世界を探し、日ごろの疲れを癒やしていただくようなプランを作成します。

あなたが大切な友人に誕生日プレゼントを贈るとしたら、友人が喜びそうなものは?友人が好きそうな色は? 友人が日常で使えそうなものは? などと思い浮かべ、どんな物を贈ると喜んでもらえるのか、想像しながら探すのではないでしょうか。

それは友人のことを知っていればいるほど、想像は膨らみ、プレゼントの幅も広がるでしょう。それと同じように、お客様に喜んでもらうには、お客様が何を求めているかを知っている必要があります。

過去の履歴を記録しておくことはもちろんですが、日ごろの何気ない会話の中にも、お客様を知る大切な情報はたくさん含まれています。

それを意識し収集し、とにかくお客様を知り尽くすのです。「このお客様のことなら、誰にも負けない」というくらい、お客様のマニアになることです。こちらからのご提案の幅も広がり、お客様の選択肢も広がり、より満足度の高いものを提供することができるようになります。それが、お客様に対する最高のおもてなしにつながります。

極上のサービスポイント
日ごろの会話から情報を収集し、お客様のマニアになる。

 

成功かどうかは、お客様が決める

『失敗を恐れない』

先日飛行機に乗ったとき、ノートを出してマインドマップを書きながらこの本の原稿の筋道を整理していました。

そのとき、CAの方に声をかけられ、「ご利用になりますか?」と手渡されたのが小さなメモ帳でした。私は一瞬意味がわからず「大丈夫です」とお断りしました。

書くものを探していたわけではなかったし、マインドマップを書きたかったので大きめのノートが必要だったのです。なぜ、メモ帳を渡されたのかがわかりませんでしたが、しばらくしてその意味がわかりました。

私は、隣の乗客の邪魔にならないよう、ノートも少し丸めながら無意識に身をかがめて書いていました。CAの方は私のその姿を見て、小さいメモ帳を使ったほうが書きやすいのではと思ってくれたのです。

きめ細かい心遣いがうれしかったのと同時に、自分がコミュニケーターだったときに持っていた、チャレンジする精神を思い出しました。

お客様に喜んでもらいたい、お役に立ちたい―。

しかしお客様によって、喜んでもらえることは違います。あるお客様には喜んでもらえても、違うお客様には響かないこともあります。何度も応対しているうちにお客様の好みがわかるようになるのですが、最初はまさにチャレンジの繰り返しでした。

たとえば、翌月のお振替金額は月末に確定しますが、そのころにたまたまお電話をいただいたお客様に対し「来月のお振替金額が確定しましたので、ご案内いたしましょうか」と確認し必要なお客様には金額をお伝えします。

「気が利くね」と喜んでいただけるお客様もいれば、「必要ない」と言われるお客様もいらっしゃいます。

最初、私は、お客様に断られたことで自信を失くし、他のお客様に伝えることができませんでした。ありがた迷惑かもしれない。いったんそう思うと、自分の行動に躊躇してしまい、ご提案ができなくなってしまいます。

特に電話はお客様の反応が見えにくいので、チャレンジすることに恐怖感を覚えてしまうのです。そうすると、途端に言われたことだけに対応する人間になってしまいます。自分から積極的にプラスα の応対ができなくなってしまうのです。

『いいと思った提案はとにかくやってみる』

「必要か必要でないかはお客様が決めること。自分がいいと思った提案はご案内してみなければわからないよ。チャレンジしてみたら?」
先輩はこうアドバイスをしてくれました。

私はいいと思ったことはとりあえずお客様にお伝えすることを繰り返しました。的外れなこともあったかもしれません。大きなお世話なこともたくさんあったかもしれません。でも、やってみない限り、どんなことで喜んでいただけるのかはわかりません。

喜んでもらえるかどうかは、自分が判断することではなく、お客様が決めること。大切なのはお客様に喜んでもらえることを考え、伝えてみることです。そう思えるようになってから私はチャレンジすることへの恐怖感がなくなりました。

先ほどのCAの方も、もしチャレンジに躊躇があれば、メモ帳を渡すという提案はしなかったでしょう。結果的に、「必要ない」と断りましたが、ちゃんと私を見ていてくれたのだということがわかり、とても心が温まりました。

相手の反応を気にして躊躇するより、自分がいいと思うことは積極的にチャレンジする。それが、自分のサービス力を高めます。

極上のサービスポイント
自分がうれしいと思うことは、積極的に提供する。

 

言われたとおりだけでは終わらせない

『タイプに応じて提案の仕方や量をコントロール』

先日、洋服を買うためにあるショップに入りました。初めて入るショップだったのですが、気になる服を手にしながら店内を歩いていると、店員さんが、「何かお探しでしたらお声をかけください」と、離れたところで立っていてくれました。

私は、買い物中にあれこれ話しかけられるのが好きではありません。必要なときにだけ応対してほしいと思うタイプなので、店員さんが離れたところで見守ってくださっているのがわかり、安心しました。

店内を見ながら歩いていると気になる服がありました。私は手に取った服の色違いがあるかを聞きたくて店員さんに声をかけると、すぐに持ってきてくれました。

そのとき彼女は、私が指定した色とは違う色の服も持ってきてくれたのです。
「お客様は、こちらの色もお似合いになるかと思いまして……」

店員さんが選んでくれた色は、普段私が選ばないような色でした。でも、鏡に合わせてみるとその色が一番自分に似合っていることがわかり、結局店員さんが選んでくれたものを購入しました。

「さすがプロだな」と思ったのと同時に、とっさの提案力がすばらしいと感じました。中には私のためではなく、お店の売上のためだろうと思ってしまうくらい強引な提案をする人もいますし、もう少しアドバイスをしてもらいたいのに、物足りなく終わるケースもあります。

彼女は、お客様のタイプに応じて、提案の仕方や提案の量をコントロールしていることにすぐに気がつきました。

『お客様の可能性を広げる』

私がコミュニケーターだったとき、こんな経験をしました。

お客様から旅館を探していると言われ、提携先の高級旅館をご案内し、予約を入れました。ところが、何日か経って、同じお客様から別のコミュニケーター宛に私が手配した旅館ではなく、別の旅館を探してほしいというお電話が入ったのです。私はショックを受けました。

ショックだったのは、ご紹介した旅館を気に入ってもらえなかったからではありません。お客様が、別のコミュニケーターに電話をされたことでした。

その後もその方からの、私への指フ 名はどんどん減り、他の人が指名されることが多くなりました。
「お客様のご要望を聞き、そのとおりに手配できているはずなのに……」

そう思っていた私は、指名が減る理由がわかりませんでした。

私は、「どうすれば、お客様から指名していただけるのか」を見極めるため、しばらく他の人の応対を観察することにしました。すると、次第に見えてきたことがありました。

私ができていなかったことは「ご提案」だったのです。私は、お客様から言われたことだけに対応していたことに気づいたのです。

ご希望の日程、人数、場所。それにマッチした高級旅館をピックアップ。そこにお客様とのズレはなかったと思います。

一方、私の代わりに指名された人は、まず過去にいただいたお客様のご要望を確認し、和室より和洋室がお好みであることやお食事の好き嫌いなどを把握していました。そして、それに対応できるか旅館に確認をし、お客様にご案内していたのです。

さらに、お孫様がご同伴のときは、近くに遊べる環境があるか確認をしたり、施設内で子供向けイベントを行なっている旅館もピックアップしていました。それらの旅館が満室のときは、前後1週間、空きのある日程を確認し、お客様にご案内していたのです。

少し足を伸ばせば、ご要望の日程で同じような条件で泊まれる旅館があることに気づき、隣町の旅館の情報までピックアップしていました。

お客様に言われたことだけに対応するのではなく、さまざまな情報を元に、彼女はご提案の幅を広げていたのです。

私と彼女がお客様にご提供した情報の差は明らかでした。私に足りなかったのは、プラスα の提案力だったのです。
あなたにもし部下がいたとしたら、その部下のことを想像してみてください。

言われたことに正確に対応してくれることはとても大切です。しかし、会議に必要な関連資料を気を利かせて用意しておいてくれたり、違うアイデアを提供してくれ、自分の仕事の可能性を広げてくれたり、指示をしていないのに会議室の準備ができていたとしたら、とても頼りになる部下だと思いませんか。

お客様から言われたことを忠実に対応することはもちろんのこと、お客様の可能性が広がるようなプラスα の提案力が、信頼を高める秘訣です。

極上のサービスポイント
積極的に提案し、お客様の可能性を広げていく。

 

だから、マニュアルに頼らない

『マニュアルの真意を伝える』

「マニュアルどおりの対応だな」と感じることはよくあります。定型的に揃えることはとても大切ですが、少し柔軟に対応してくれたらいいのにと思うこともあります。

コールセンターにも、決められたスクリプトがありました。マニュアルどおりに案内することは品質を均一化するためには有効なのですが、一歩間違えると心がこもっていないようにとられてしまいます。

あるファストフード店のレジで注文をしてトレーを持って席に移ろうとした際、店員さんに声をかけられました。

「お客様、他にお食事に必要なものはありますか?」
私は意味がよくわからず、「大丈夫です」と言って席に移動しました。

別の日に、同じチェーンの別のお店に行ったときもやはり「お食事に必要なものはありますか?」と聞かれました。

疑問に思い、「食事に必要なものって、たとえばどんなものですか?」と聞いてみると、「ケチャップなどです」と言われました。私は拍子抜けして「大丈夫です」と言って席に移動しましたが、どうも腑に落ちません。

ケチャップのことを言うのなら、「ケチャップは必要ですか」と聞けばいいのです。なぜ、「お食事に必要なものは?」と聞いたのでしょう。ずっと引っかかっていました。

接客をしてくれた二人は、おそらくアルバイトの人だったのでしょう。お客様に「お食事に必要なものはありますか?」と聞くことは、レジに立つときのスクリプトだったのではないかと予想できます。

しかも、ケチャップなど調味料を聞くためのスクリプトではなく、お客様のご要望に応えたい、何かお困りのことはありませんか、というおもてなしの気持ちを示すためのスクリプトだったのではないかと思われます。

その真意が、アルバイトの人たちに伝わっていなかったのでしょう。せっかくお客様のために用意をしたルールなのに、実にもったいない話です。

お客様に真意が伝わらなければ、そのルールやマニュアルは意味をなさないものになってしまいます。定型的にできることは大切ですが、個々のお客様に合わせて対応することが必要です。

『マニュアルがマイナスになるとき』

このようなこともありました。
朝から大雪が降り交通機関も止まるほどの悪天候の日のことです。天気予報ではこれほど降ると予想していなかったのに、思いがけない大雪に首都圏は大混乱でした。

その日はちょうど、あるお客様が以前から楽しみにされていたレストランを予約していた日でした。人気のレストランでやっと予約が取れたので、お客様はとても楽しみにされていました。

お客様の予約時間は午後。ギリギリまで様子を見ようと気が気でなかったそうです。

しかし、時間が経っても雪は一向に止む気配はなく、車を出せる状況ではありません。電車もバスも止まっています。お客様は泣く泣くあきらめ、お店にキャンセルの電話を入れたところ、お店のスタッフの方に言われた言葉に衝撃を受けられたそうです。

「キャンセルされるのであれば、前日までにご連絡ください」

人気のレストランなので、「キャンセルは前日までに」とご案内するルールやマニュアルがあったのかもしれません。食材の用意をする必要があるからかもしれません。お客様もそのことはご存じでした。

しかし前日はこんなに大雪になることは誰も想像できないことでした。無理をしてでも行きたかったお客様はギリギリまで判断に迷い、泣く泣くあきらめた状況なのにそのひと言。楽しみにしていた気持ちは一気に失せた言います。

はたして、このような状況でマニュアルどおりに対応する必要があったでしょうか。お客様もできることなら行きたかったわけです。お客様の事情ではなく自然現象による不可抗力だったのです。それが想像できれば、「本日は本当に残念です。もしよろしければ次回のご予約を承りましょうか」と次につながるご案内ができたのではないでしょうか。

『マニュアル遵守は、責任逃れの証?』

ルールやマニュアルどおりに対応することも必要ですが、その時々の状況を判断し、最適な言葉を選んでいかなければなりません。もしかしたら、マニュアルから外れることは怖いことだと思っている方もいるかもしれません。

マニュアルから外れた途端、自分で考えなければなりませんし、責任も伴います。
しかし、だからこそお客様は、自分のために考えてくれたこの人を信頼しようと思うのではないでしょうか。

マニュアルやスクリプトに頼らない。自分で考えてその時々にふさわしい対応ができたとき、一流のサービスとなるのです。

極上のサービスポイント
状況に応じた言葉選びが、信頼関係をつくり出す。

網野麻理著『期待以上に応える技術』より抜粋

 

【書籍紹介~目次】

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『期待以上に応える技術』

 

はじめに

第一章「期待を超えるサービス」の基本
 究極のサービスは「お客様に気づかれない」サービス
 自己満足のサービス、顧客志向のサービス
 相手の価値観を共有する技術
 「あなただからお願いしたい」と言わせる
 どんな問い合わせにも「No」と言わない
 お客様を〝一人ぼっち〟にさせない
 同じことは言わせない
 成功かどうかは、お客様が決める
 言われたとおりだけでは終わらせない
 だから、マニュアルに頼らない
第2章絶対的な信頼関係をつくる方法
 相手の心にある5つの扉を開けるカギ
 相手との「心の距離」の測り方
 信頼関係を築くメソッド「ジョハリの窓」三段活用
 人間関係を左右する絶大な言葉「いつもありがとう」
 知らないことを怖がらない
第3章声と耳だけでのおもてなし
 お客様を「お客様」と捉えない
 「またかけたい」と思わせる第一印象のつくり方
 自分の印象を管理する
 声だけで特定する究極の個別対応術
 お客様の呼吸や息遣いを感じる
 「3つ目の声」に注目をする
 「!」を声で表現し、表情を言葉に出す
 信頼貯金の貯め方と使い方
 クレームのときは、お客様も気づいていない感情を代弁する
 会話の中でリーダーシップを発揮する
 沈黙を活用する
第4章 最上級のサービスマインドをつくる方法
 チームワークを強くする土台のつくり方
 自ら実践し手本を見せる
 考えさせる機会をつくる
 自信を持たせる仕組みづくり
 安心できる環境をつくり出す  
 コンプレックスを強みに変える  
 全員にスポットライトを当てる
 ブレない軸と自由を持たせる
第5章お客様のタイプ別コミュニケーション術
 9つのタイプ別超実践的コミュニケーション術
 秩序を大切にされるお客様
 優しさや愛を大切にされるお客様
 時間や効率を大切にされるお客様
 感性や独自性を大切にされるお客様
 情報を大切にされるお客様
 安心感を大切にされるお客様
 新たな可能性を大切にされるお客様
 影響力を大切にされるお客様  
 平穏なつながりを大切にされるお客様
おわりに

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