「相続」で大事なのは、遺言書に書かれた財産配分よりも順位と遺留分!? 嵩原安三郎氏が綴る【2つの見えざる原因から「相続問題」を解決する方法】

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最近の「相続問題」の世界では「争族(そうぞく)」という言葉が一般的になってきています。

「争族」とは、漢字から想像できる通り、亡くなった人の財産を巡って争う親族のことや争いそのものを指した造語です。「相続問題」や「争族」と聞くと、財産が多い家や兄弟が多い家というイメージが強い人が多いのではないでしょうか。

それゆえ「相続問題」と聞いても、

・うちは子どもたちが取り合うような財産なんてないから関係ない
・財産どころか借金があるくらいだから相続もなにもない。
・自分は兄と2人兄弟で昔も今も仲が良いから問題なんて起きない
・自分はひとりっ子だから問題を起こす相手がいない
・たいした財産でもないし税理士にでも頼んでおけば大丈夫
・遺言を書いておけばいいのだろう

と、自分にはどこか関係のない話だと思っている人が大半です。

あなたはいかがですか?
相続に関して問題なんて起きないだろうなんて思っていませんか?

実はそう思っている多くの人が、現実に「相続問題」に巻き込まれています。そしてその誰しもが「うちの家族がこんなことになるなんて」と嘆くのです。

あなたもこのまま「相続問題」なんて起きないだろうと安易に考えていると、その「誰しも」の1人になりかねません。

ではどうして、どう考えても起きないだろうと思う「相続問題」に巻き込まれることになるのでしょうか?

まず「相続問題」が起きる原因ですが、多くの人が思っている「財産が豊富な家」だからでも「兄弟がたくさんいる家」だからでもありません。

財産や兄弟が多くても「相続問題」が起きないところには起きないのですし、財産や兄弟が少なくても起きるところには起きるのです。

では「相続問題」が起きる本当の原因とはなんでしょうか?

答えは2つあります。

その1つは・・・「人間関係」
もう1つは・・・「感情」

です。

ここでいう「人間関係」とは、

・弟はマイホーム購入の時に頭金を一部出してもらっている(特別受益)
・妹は結婚のとき嫁入り道具を買ってもらっている(特別受益)
・父が貯金を残せたのは長男の俺が事業を手伝って繁盛させたからだ(寄与分)
・長女の私が寝たきりの母を最期まで看病した。介護のプロを雇えばお金は全く残っていないはずだ(寄与分)
・妻の面倒を見るからと財布を管理していた娘が、「ついで」といって妻のお金で自分のものを買っていた(遺産の使い込み)

など、親からの子への協力や子から親への協力によって生じる『お金を巡る「人間関係」』のことです。

こういう『お金を巡る「人間関係」』は、上記のカッコ内で示している通り「特別受益・寄与分・遺産の使い込み」と、立派な「相続問題」の要素となります。

しかもこの「特別受益・寄与分・遺産の使い込み」は「相続問題」が起きる三大理由とも呼ばれているよくある事柄なのです。

そしてもう1つの原因である「感情」ですが、ここでいう「感情」とは、

・平等に分けたら、家の頭金を出してもらっている弟だけ得をすることになる!
・平等に分けたら、結婚せずに結婚道具を買ってもらっていない私だけ損をすることになる!
・自分が事業を手伝っていなかったら父親の店はつぶれていた!
・母親の面倒は私1人で見て大変だった!

など「損得」や「貢献に対しての評価」そして「相手だけ・自分だけ」といったところから生じる「感情」のことです。

また

・妻の遺産は夫である俺の物と同じだ。さんざん自分の物を買った娘はもういいだろう
・兄は大学まで出してもらっているけど俺の時は借金があって行かせてらえなかった。親の残した借金を2人で同じ金額ずつ払うのは不公平だ

など、独自の事情から生じる「感情」もあります。

こういう「感情」こそが「家族」を「争族」に豹変させてしまうのです。
「相続問題」は、この「感情」を抜きにして未然に防いだり解決したりはできません。
財産・兄弟の有無や多い少ないなどは人によりますが、「感情」はどのような人にもあります。
ですからこのままでは、あなたも「相続問題」に巻き込まれる可能性が十分にあるのです。

しかし逆に言えば、家族と自分における「人間関係」と「感情」をきちんと押さえて考えておけば、「相続問題」は未然に防止でき、仮に起きても良い解決ができるというわけです。

せっかくの家族、本来誰も争いなんてしたくないはずです。
できればいつまでも仲良く助け合っていきたいですよね。
そうすると亡くなった方も安心して旅立てることでしょう。

しかしここで『「人間関係」と「感情」をきちんと押さえて考えましょう』と言われても、具体的にどのように押さえて考えて行けば良いか分からないですよね。

そこで今回、「相続問題」を「人間関係」と「感情」の観点からひも解いていくのが、様々な相続問題に携わり解決してきた弁護士の嵩原安三郎氏です。

嵩原氏はこれまで「法的な方法」よりも『「人間関係」と「感情」にフォーカスをあてる方法』で「相続問題」に悩む多くの人を笑顔にしてきました。

そしてもっともっと笑顔を増やすため、解決してきた「相続問題」での経験やエピソードから得た「知識とテクニック」を1冊にまとめたのです。

本書では、他の相続関係の本ではあまり触れられていない、でも根本的理由で1番解決していかなくてはならない「人間関係」と「感情」をベースとしています。それらをもとに「相続問題」を防ぐ方法や解決する方法を、分かりやすく具体的に解説しています。

そのなかでも大切なのは順位と遺留分です。順位は文字通り、相続の優先順位です。この優先順位は通例、法律で決まっています。相続問題で焦点となるのがこの順位の付け方です。

遺留分という言葉はあまりなじみがないかもしれません。しかし、遺留分というのは実は遺言書より強い効果を発揮するのです。遺言書で不利なことが書かれていても守ってもらえる制度があるのです。遺留分のことを知るだけでずいぶんと助かるケースがあるのです。

ただし、この遺留分については正しい知識を持たないと遺産を守れなくなってしまいます。遺留分についてはどなたでも必ず正しい知識を持っておきましょう。

さらに、基礎知識・遺言書・節税・生命保険・不動産・相続放棄・専門家問題などを、テーマごとに掘り下げて解説しています。
ですから、あなたが興味を持ったところや気になるところの手引書としても役立ちます。

あなたは「相続問題」を無関係だと思っていませんか?
「自分の家族がこうなるなんて!」となる前に「相続問題」の根本的な原因を知っておくことはとても必要です。
これを読めば、具体的にどうすれば良いかを気持ちと知識の両面から知ることができます。

では、大切な家族と良好な関係を続けていくためにも、さっそく読み進めていきましょう!

 

あなたにとっての○○を見つけてください――まえがき
第1章 相続の基礎知識を得て争族の火種を消しなさい!
知らないと損する! 不幸のきっかけは知識不足が6割?
相続人は誰? 必ず相続できる人と順位で相続できる人 
遺言書がなかった場合、誰がどれだけ相続する?「法定相続分」の基礎知識 
紛争発生の三大理由「特別受益」「寄与分」「遺産の使い込み」とは? 
相続トラブルになるケース①「特別受益」とは? 
相続トラブルになるケース②「寄与分」とは? 
相続トラブルになるケース③「遺産の使い込み」とは? 
時が解決しない!? 相続問題の4つのタイムリミットとは? 
家族を救うか、火種になるか?「遺留分」は「遺言書」よりも強い? 
どうすれば子どもから親へ「相続問題」を話し出せるのか?

 

あなたにとっての○○を見つけてください―まえがき

今、書店を訪れると「相続コーナー」には多くの書籍が並んでいます。筆者の肩書きもさままで、税理士、行政書士、弁護士などの「士業」だけでなく、「相続コーディネーター」などの肩書きの方も見かけます。

あまりに多すぎて、どの本を読めばいいか迷ってしまいませんか?
一口に「相続問題を扱った本」と言っても、その内容はさまざまです。

「節税」に重点を置いたもの。
「相続」という制度全体を解説したもの。

「遺言書」や「エンディングノート」の作成をすすめ、その書き方を説明するもの。
「相続で損をしないような対策」をアドバイスするもの。

しかし、「相続問題を考える際のすべての人が抱く根本的な疑問」に答えている本はあまり見かけません。

その疑問とは何か? それは「そもそも私にも相続対策が必要なの?」です。
次のようにおっしゃる方をよく見かけます。

「うちは息子と娘は兄妹仲良くそれぞれ立派に独立しているし、私も財産の分け前をきちと考えているから大丈夫」

「そもそも財産と呼べるほどのものはないし、万が一のときは知り合いの税理士に頼めばいから、うちにかぎって〝争族〟なんて……」

また、私は相続トラブルの講演をする機会が多くありますが、そのときの参加者の反応の多くは「私の周囲には相続争いしそうな家族はいないよ……」というものでした。

しかし、本当でしょうか?

相続トラブルに巻き込まれた人のほとんどが「私たち家族がこんなことになるとは思ってもいなかった」と言います。ほぼ確実に言います。相続トラブルに巻き込まれた人たちは、右の発言をした人と同じように「普通の人たち」なのです。

読者のあなたは「普通の人たち」でしょうか?

—相続問題とは「人間関係」と「感情」の問題

相続問題がトラブルに発展すると、一般の法律トラブルとは違い、非常にドロドロしたものとなり、泥沼の紛争となるケースがほとんどです。まさにあなたに最も近い魑魅魍魎の世界と言っていいでしょう。

相続トラブルを〝争族〟と呼ぶことが一般になりました。しかし、あなたはどんな家族が〝争族〟となっているのか想像できますか? 遺産が多い家族でしょうか? きょうだいが多い家族でしょうか?

もちろん、遺産が多く、きょうだいが多い家族での〝争族〟もあります。しかし、そんな家族でも〝争族〟に発展したのは、遺産が多いことでも、きょうだいが多いことでもありません。原因は別にあります。相続トラブルは決して財産が多いから生まれるのではありません。

「私が損するなんて許せない!」「あいつだけ得しやがって!」という感情から生まれるのです。また、「自分がお父さんの会社を手伝っていなかったら、とっくにつぶれていた」とか、「お母さんの面倒は私が1人で見た」と自分のやってきたことを実際以上に高く見積もったり、「あいつがお父さんの介護をしたといっても、ほんの少しじゃないか」と他人の貢献度を低く見たりするのは世の常です。

さらに恐ろしいことに、「親の財産なんだから私がもらったってバチは当たらないだろう」とそれほど悪びれずに犯罪も横行しています。

結局、相続問題は「人間関係」と「感情」を抜きに考えることはできません。遺言書の書き方、節税の方法など、事務的なことだけ学べば解決するものではないのです。

さきほど「魑魅魍魎」という言葉を使いましたが、相続問題は良くも悪くも血の通ったものとして扱わなければなりません。鬼が出るか蛇が出るか、あるいは全員が笑顔になるような結末を迎えられるか—?

—本書の構成について

私はこれまで数多くの人から相続の相談を受けたり、相続トラブルの解決法のお話をしてきました。相続トラブルに悩む多くの人を笑顔にしてきた自負があります。

もちろん、守秘義務があるので特定不可能な範囲で書いておりますが、それらの経験、エピソードから得た知識やテクニックを本書でお伝えしていきたいと思っています。

本書は、ほかの相続関連本ではあまり触れられなかった「人間関係」と「感情」を下敷きにして、章ごとに「基礎知識」「遺言書」「節税」「生命保険」「不動産」「相続放棄」「専門家問題」などの諸テーマを掘り下げた新しいタイプの相続の本です。

それぞれのテーマは複雑に絡み合っているため、各節の冒頭に関連キーワードを記しております。あなたがとくに気になる問題を探す際の手引きとしてご活用ください。

また、財産を残す親の側、財産を受け取る子どもの側、どちらにも読んでいただけるように構成しております。先ほど述べたとおり、相続問題は「人間関係」と「感情」の問題なので、それぞれが相手の立場になりながら読んでいただくことで、いっそう理解度が増すものと期待しております。

そしてぜひ、あなたに必要な相続でもめないための○○を見つけてください。

〝争族〟に発展した家族には、似たような特徴があります。
あなたの家族はどうですか?

次ページにチェックシートを用意しました。それをチェックすることで、「そもそも私にも相続対策が必要なの?」に対する答えが出てくるはずです。

 

第1章
相続の知識を得て相続の火種を消しなさい

基礎知識▶遺言書
知らないと損する!
不幸のきっかけは知識不足が6割?

私が相談者からお話を伺うとき、最も感じるのは「知らないってことは損することなんだなあ」ということです。

たとえば、父親が亡くなったあと、長男が「お父さんは亡くなる直前、みんなの前ですべて長男に任せると言っていただろ!だから遺産の分け方はオレが決める!お父さんの遺志だ!」と言い出したとします。

確かに、お父さんは何か言っていたようだが、はっきりは聞き取れなかった。まあ、兄さんの言うとおりかもしれない……などと思っていると、あれよあれよという間に長男にいろいろな書面にサインを求められてしまう。

これは、「遺言は書面(遺言書)でのみ有効」ということを知らないための不幸です。そもそもお父さんが何を言ったのか不明ですが、仮に何か「それらしきこと」を言っていたとしてもそんな〝遺言〟は法的には無効です。

—だまされる人の特徴

また、遺言書がワープロソフトで作成されたものだったり、夫婦2人のサインが入ったものであったり、文言が幾通りにも解釈できるような内容であったりして、せっかく残した遺言書が無効になってしまうケースもたくさんあります。

知識がなかったことによる悲劇の最も典型的な例は、「相続人の1人として署名・押印を求められ、よく意味もわからないままに応じてしまったが、じつはそれは相続放棄に同意する書面だった」というケースです。

先日、テレビである芸人さんが少年時代にこれとまったく同じ経験をしたことを話していて、「ちゃんと教えてくれる大人が周りにいなかった」と嘆いていましたが、何もその芸人さんの少年時代だけでなく、まさに今この瞬間も、日本全国のどこかで行われていることなのです。

あとになってその書面の意味を知ったときには「時すでに遅し」とただただ嘆くことになってしまいます。

悪いのはだます人間です。それは間違いありません。

しかし、損をしてしまうのはいつも「知識不足の人間」「やるべきことをしない人間」なのです。そしてその人は、実際に「損をしてしまう」まで、だまされるなんて他人事だと思っているのです。

あなたがそうならないことを切に願います。

ポイント 知識不足で損をしても、誰も救ってくれない。

 

基礎知識 人間関係
相続人は誰? 
必ず相続できる人と順位で相続できる人

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誰かが亡くなった場合、その人の財産を受け継ぐ「相続人」は誰でしょうか?
じつは、その人が亡くなったときの状況で変わります。

相続人には2種類あります。必ず相続できる人と、順位によって相続できる人です。

まず、「必ず相続できる人」「配偶者」です。「配偶者」とは、一緒に住んでいる人ではなく、きちんと婚姻届を出している人にかぎられますから、内縁の妻・夫やすでに離婚している人は「配偶者」にはならず、もちろん相続人にはなりません。

—相続できる順位とは?

次に、「順位によって相続できる人」です。

第1順位は、「子ども」です。

これは血のつながっている子(実子)でも、養子でも同じ扱いですし、「離婚した前妻との間の子」も当然「子ども」ですから、相続人に含まれます。子どもは平等なのです。ただ、「再婚したときの相手の連れ子」はそのままでは法律上の「子ども」になりません。「養子」にしなければ相続できないのです。

以上から、たとえば、父親が妻、子ども2人を残して亡くなった場合、父親の財産(遺産)は妻と子ども2人で分けます。具体的には妻が半分、子どもが残りの半分を平等に分けます(つまり、子ども2人なら相続財産全体の4分の1ずつ)。

ちなみに、父親が亡くなったときに、子どものうちの1人がすでに亡くなっていた場合はどうでしょうか? もちろん、亡くなった人自体は相続できません。ですから、さきほどの例でいうと、妻が半分もう1人の子どもが半分相続することになります。

ただ、亡くなった子どもにお子さん(父親から見て孫)がいた場合、すでに亡くなった子どもの代わりにお孫さんが相続することになります。これを代襲相続と呼んでいます。

相続人として「子ども」がいなかったときはどうなるでしょう。
第2順位は「親」です。

子どもが親より先に亡くなることを親の悲しみの深さから「親不孝」などと言うこともありますが、実際に「子」が親より先に亡くなり、「親」が「子」の財産を相続するというケースはそれほど多くはありません。

第3順位は「きょうだい」です。

「きょうだい」が相続するのは、亡くなった方に「子ども」も「孫」もなく、さらに「両親」とも先に亡くなってしまっている場合です。この場合にはじめて亡くなった方の「きょうだい」が相続人になるのです。

ポイント 相続人には順番がある。

 

基礎知識▶遺言書・人間関係
遺言書がなかった場合、誰がどれだけ相続する? 
「法定相続分」の基礎知識

遺言書がないまま亡くなった場合、残された家族は法律に定められた割合で遺産を分けることになります。これを「法定相続分」と言い、分け与えられる人を「法定相続人」と呼びます。

しかし、分け方は「頭割り」ではありません。「亡くなった方(被相続人)との関係の近さ」で分配率が違います。

「最も亡くなった方と近い」と考えられるのは配偶者(夫・妻)です。この方を中心に考えましょう。配偶者の取り分は、「配偶者と一緒に相続する人は誰か」で変わってきます。

配偶者と子どもが相続
【配偶者】遺産の2分の1。
【子ども】遺産の2分の1(子どもが複数いれば、この2分の1を頭割り)。

子どもがすでに亡くなっている場合にも、その方に子どもがいれば代襲相続します。

配偶者と亡くなった方の親(義父母)が相続
【配偶者】遺産の3分の2
【義父母】遺産の3分の1

これは、子どもがいなかったケースになります。

配偶者と亡くなった方のきょうだいが相続
【配偶者】遺産の4分の3
【きょうだい】遺産の4分の1
「きょうだい」の場合にも代襲相続があります。

ポイント 分配率は被相続人との近さで変わる。

 

基礎知識▶人間関係
紛争発生の三大理由
「特別受益」「寄与分」「遺産の使い込み」とは?

相続について解説した本を読むと、多くの本に「相続争いは遺産の金額が小さくても起きるものだ」と書いてあります。しかし、遺産は多いのに円満に遺産分割が進むことももちろんあります。〝争族〟は金額によらないのです。

それは当然です。相続争いをするのは「遺産」ではありません。相続人という「人」が争うのであり、相続人同士の「人間関係」が相続争いを引き起こすからです。

「相続争いが起きやすい人間関係」については第8章でお話ししますが、ここではとくに大きなトラブルに発展することが多いケースを3つご紹介します。

1つ目は、生前に被相続人(親など)から「結婚費用」「住宅購入の頭金」「開業資金」など、特別なお金をもらったことがあるきょうだいがいるケースです。これは遺産の一部を先にもらったとも考えられ、「特別受益」(→ 32 ページ)という問題です。

2つ目は、生前に被相続人の事業を手伝ったり、かいがいしく介護を行ったりして、特別な貢献をしたきょうだいがいるケースです。その貢献分が相続に反映することを「寄与分」(→ 38 ページ)と言います。

3つ目は「遺産の使い込み」(→ 43 ページ)という問題です。父親に頼まれて銀行からお金を下ろしたついでに、自分の生活費を一緒に下ろして使っていたり、母親のお金を下ろしたついでに自分の生活用品や食料を買い込んだりするというようなケースです。

この3つの問題は、程度の差はあれ、ほとんどの相続のケースで見られるものです。

相続争いが起こらない場合でも、「問題がまったくない」のではなく、「運良く問題とならなかった」だけであり〝争族〟に発展する種はほとんどのケースで存在するのです。

この3つの問題については、次節以降で一つひとつ詳しく説明していきます。

ポイント 相続トラブルのきっかけは 「特別受益」「寄与分」「遺産の使い込み」。

 

基礎知識人間関係・遺言書
相続トラブルになるケース① 
「特別受益」とは?

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「相続人の1人が他の相続人とは別に特別にもらったお金」を「特別受益」と言います。特別受益と見なされるものには、親が子どものために出してあげたマイホーム購入資金、開業資金、嫁入り道具購入資金などがあります。どのご家庭にも多かれ少なかれあるのでは?

子どもが親からもらったお金が法律上「特別受益」とされますと、そのお金はいわば「相続財産の前渡し」と見なされます。

たとえば、父親が亡くなり、相続人が2人の兄妹、遺産は3000万円の預金のみ、ただし妹にだけ15 年前に住宅購入の頭金1000万円を出してもらっているというケースを見てみましょう。

もし、妹がもらった住宅購入の頭金1000万円を特別受益と見なさなかったとすると、父親の遺産である預金3000万円を兄妹で平等に分けることになり、兄も妹も1500万円ずつ受け取ることになります。

しかし、通常は住宅購入の頭金は特別受益と見なされるでしょう。ですから、兄が「住宅購入の頭金は無視していいよ」と言ってくれなければ、住宅購入の頭金1000万円は特別受益と考えざるを得ません。

住宅購入の頭金を特別受益と考えますと、相続の対象となる遺産は「3000万円+ 1000万円」の合計4000万円と見なされます。とすると、兄妹それぞれの相続分は2000万円ずつになります。

そして「妹はすでに1000万円もらっている」と考えることになりますから、その結果、兄は残された預金のうち2000万円を、妹は残りの1000万円を受け取ることになります。これが特別受益の考え方です。

—特別受益の理想と現実

しかし、実際にはこんなにすんなりいきません。

たとえば、妹が「住宅ローンの頭金のうち、もらったのは500万円だけ!」とか、「1円ももらっていない! 頭金は全部自分で出した!」などと言い出すことでトラブルになるケースを私も多く担当しました。

もちろん、妹が嘘をついているとはかぎりません。兄が「妹は住宅購入の頭金をお父さんに出してもらった」と主張する根拠が、「お母さんが生前そう言っていた」というだけに過ぎないことも多く、しかもそれが母親の勘違いである可能性もあるからです。

父親としても、よかれと思ってかわいい娘のために出したお金が兄妹仲違いの原因となるなんて思っていなかったでしょうから、頭金を出してあげた証拠は残していません。

この場合、父親はどうしておけばよかったのでしょうか。

もちろん、「住宅購入の頭金として妹にあげたのは1000万円だった」と兄妹に説明し、できれば文書で残す方法も考えられます。また、心情的に直接話すのは難しいという人には、特別受益分を踏まえた遺言書を作成することも有効です。

とはいっても単に「特別受益 1000万円」とだけ書いても仕方ありません。

遺言書の一般的な注意点については第2章で説明しますが、特別受益のトラブルを回避するために遺言書をつくる場合には、遺産の分配方法と合わせて特別受益の額と内容、あげた日付などを書く必要がありますが、それ以外でも必ず次の2点は守ってください。

親から子どもに伝えるメッセージ
単にお金のことだけを書くと、子どもも相続の取り分の多い少ないだけに注目してしまい、子どもは残念ながら「損した」「お父さん(お母さん)は私のことは考えてくれない」とマイナスにとらえてしまいがちです。

親から子に残す、子の人生のよりどころになるような、熱いメッセージが必要です。

相続人のそれぞれの分配方法と、そのように分けた理由
①が熱く書けており、かつ分配の理由も書けていれば、特別受益が認められ、相続分が少なくなってしまった子どものほうとしても(しぶしぶかもしれませんが)納得できます。

もちろん、特別受益について額まできちんと書いているわけですから、仮に調停や裁判になっても、遺言書の内容がひっくり返される心配もありません。

—特別受益でもめないために子どもがすべきこと

しかし、このように親が積極的に遺言書を残してくれるならいいのですが、実際にはそのようなケースは多くありません。

とはいえ、相続する息子・娘の立場では、親に「遺言書を書いてくれ。特別受益のことも書いてくれ」とは言いにくい……というのが本音でしょう。

その場合には、少なくともぜひ親が元気なうちに、「妹の住宅ローンの頭金はいくら出したの?」「お兄さんの留学費用はいくらだったの?」と聞いて書面化しておいてください。

書面の形式は問いませんが、

◎ 特別受益の内容。
◎ 特別受益の額。
◎ 親の自筆のサインと押印、日付。

は絶対に必要です。

録音も証拠とはなりますが、親が亡くなったあと、子どもの1人が「お父さん(お母さん)はこんな声じゃなかった!」と言い出すと、「声紋鑑定」は非常に難しく、証拠として認められない可能性も高くなり、トラブルはかなり長期化します。

書面化(証拠化)がめんどくさい人は、あとで不利になってもあきらめてください。
なお、逆に遺言であらかじめ「特別受益」を相続分から控除させないようにしておくこともできます。ただ、子ども同士のいさかいの原因にもなりますので慎重に。

ポイント
特別受益について子どもに話し、証拠化しておく。
紛争に発展しないように遺言書で伝える。
子どものほうも聞き取り調査・証拠化しておく。

 

基礎知識人間関係・事業
相続トラブルになるケース② 
「寄与分」とは?

相続の際でトラブルになる2つ目のケースは「寄与分」の問題です。

「寄与分」とは、相続人の努力により、被相続人(父親や母親)の財産を増加させたり、または財産の減少をくいとめたりした際に認められるものです。いわば「相続人の貢献分」で、その貢献分を遺産から受け取ることができるというものです。

では「寄与分」が認められた場合とそうでない場合で、どのくらい相続分が変わるかを見てみましょう。

父親の事業を2人兄弟のうち長男が手伝い、自己資金も提供して事業を発展させたおかげで、父親も役員報酬を十分にもらえ、父親が亡くなったあと預金が3000万円あったというケースを想定します。

寄与分を考えないのであれば、これを残された母親や2人の子どもたちで法律上の基準に従って分配することになります。

〈寄与分を考えない場合〉
母親(配偶者)    1500万円
長男        750万円
次男        750万円

しかし、長男はこう考えていました。

「よく考えると、オレ(長男)が事業を手伝うまでは会社は倒産寸前で、お父さんの役員報酬もほとんど出ておらず、新たな貯金なんかできていなかった」

「貯金ができていたとしても、若いころに株でもうけた虎の子の1000万円だけだったろう。とするなら、2000万円は『オレががんばったから』と言えないか」

「オレがお父さんの事業を手伝わなければ、本来この2000万円は遺産として存在せず遺産は1000万円だけしかなかったはずで、お母さん、弟(次男)は受け取ることができなかったはず」

「なら、2000万円はすべてオレが受け取っていい!」

この「2000万円」が「寄与分」です。「寄与分」を考える場合には、遺産から「寄与分」を差し引いて相続人に遺産を分配し、「寄与分」の額は「寄与した者」に全額渡すことになります。

〈寄与分を考える場合〉
母親(配偶者)      500万円
長男        2250万円(250万円+2000万円)
次男         250万円

このように、「寄与分」を考えるか否かで相続する財産が格段に違ってくるのです。

右のケースは「遺産を増加させた」ケースでした。しかし、逆に「遺産を減少させなかった」ケースでも「寄与分」は認められます。

たとえば、娘がかいがいしく母親の介護を行ったケース。娘はこう考えます。

「私(娘)が介護を一生懸命行わなければ、プロの介護人を雇わなければならなかった」
「プロの介護人を雇えば、その費用で月に10 万円以上支出することになっただろう」

「実際には私が介護を5年間、一生懸命行った」
「私が介護を一生懸命行った結果、10 万円× 12 カ月×5年=600万円の支出が抑えられた」

このケースでは、いわば母親の財産が600万円減らずに済んだので、それを娘の「寄与分」と見ようと考えるわけです。

—もめないためには尊敬と感謝

寄与分の話になりますと、まあ、もめます。

ほかの子どもたちがふだんから、「父親の事業をもり立てる長男」や、「母親の介護を献身的に行う長女」を尊敬し、感謝していれば、長男や長女が寄与分の主張をしても納得できるでしょうし、一方で長男や長女の側の主張そのものも控え目になるはずです。

しかし、子ども同士で互いの献身を否定するような発言をしてしまうと取り返しがつかない泥沼の紛争になってしまいます。

寄与分で一度もめ出しますと、最終的に裁判所で解決するしか方法はなくなり、費用も時間もかかるうえ、解決したあとも深い溝ができてしまいます。人は自分の功績を実際よりも大きくとらえがちであり、反対に他人の功績を実際よりも小さく考えるものです。

もし、相互に感謝と尊敬がないと感じた父親(母親)が、子どもたちに「長男のおかげで事業がうまくいっている」とか「献身的な介護にとても感謝している」などの意思表示をしていたらトラブルは避けられる可能性がぐんと上がるのですが、そんなことを「ふだんから言っていない」または「言えない」親が多いのが頭の痛いところです。

しかし、最も重要なのは父親(母親)が「どれだけ助かったか」を子ども全員で把握することです。父親が元気なうちに食事会でも開いて酔った父親の口から「お父さんの事業に長男がどのくらい役に立っているか」を聞き出したり、入院した母親をお見舞いに行って、「長女のふだんの介護がどれだけ献身的か」をみんなで確認したりする機会をぜひともつくってみてください。

そうすれば、相続開始後に「寄与分」の話になっても円満に話が進むはずです。

ポイント
「貢献」について感謝と尊敬がなければ泥沼の争いに。
「貢献度」についてきょうだい間で共通認識を持っておく。

 

基礎知識▶人間関係
相続トラブルになるケース③ 
「遺産の使い込み」とは?

紛争が起こる三大理由の最後の一つは「遺産の使い込み」です。
「遺産の使い込みって本当にあるの?」という質問には自信を持って答えられます。

ええ、とてもたくさん。あなたのところは大丈夫ですか?

「会社のお金を経理が使い込み……」というニュースがときどきテレビなどで大きく報道されています。確かに「会社のお金を使い込む」というと心理的なハードルが高く、夢想しても実際に行う人はほとんどいません。

しかし、「親の財産の使い込み」は驚くほど多く行われています。

—親の通帳を持っていると感覚がマヒしてくる

最初は小さなことです。親の面倒を見ていたり、財産を管理しているきょうだいが、親に頼まれた買い物をするついでに、自分のものも買ったりするという程度のものです。小さなお金なら親も黙認し、それどころか「いつもありがとう。お釣りは使ってね」などと言うケースも少なくありません。ここまでならあまり問題ありません。

しかし、これが繰り返されているうちに次第に感覚がマヒしていきます。

まず、「親に頼まれた買い物のお釣りでついでに自分のものも買おう」という「ついで」だったものが、積極的に自分で使う分を預金から下ろすようになります。親に「10 万円下ろしてきて」と頼まれて12 万円下ろし、2万円を「手間賃、手間賃」と自分に言い聞かせてもらってしまいます。

はじめは親が通帳を見て大騒ぎするのではないかとヒヤヒヤものです。しかし、拍子抜けするほど何もなかった。それであればと徐々に金額が大きくなり、気がついたときには親に頼まれたついでではなく、自分が必要なときに10 万円単位で下ろすようになっていってしまいます。過去に私が担当したケースでは、父親の死後、通帳を確認したら、同居の娘が勝手に一度に100万円以上下ろしていたケースがありました。

—子どもが親のカードを握ると…

さらに感覚はマヒしていきます。自分が行きたかった旅行先に強引に親を連れて行き、

「親孝行した!」と自分に言い訳して、実際には数十万円もする旅行費用はすべて親に負担させたり、「お父さんを病院に送り迎えするのに必要だから」と父親の預金を下ろして車を購入したりするようになっていくのです。

親のキャッシュカードをきょうだいのうち誰かが握っている場合、使い込みがまったくないほうが珍しいと言っても過言ではありません。

—親が亡くなったとたん、親名義の預貯金が引き出されることも

また、極端な例になると、親が亡くなったその日から数日間に親名義の預金が多額にわたって引き出されている例もあります。

勘違いしている方も多いのですが、死亡すると自動的に銀行が預金を凍結するわけではありません。遺族から連絡があったなど、あくまで銀行側が死亡を確認しなければ預金口座は凍結されないのです。したがって、子どもの誰かがキャッシュカードを持っていれば、親が亡くなったあとも預金の引き出し自体は可能です。

もちろん、その後それは露見するでしょうが、すでに引き出したお金は使ってしまってどこにもなく、ほかの相続人があきらめるケースも実際にはかなり多くなっています。

みなさんは「うちの親は月に10 万円も20 万円も使わない。ましてや100万円もの出金があれば親が使っていないことはすぐわかる!」と思っていませんか?

それは甘い考えです。「うちの親が10 万円も使わない」って、どうやって裁判官に納得させることができますか? 裁判官を納得させることができなければ、いくら「私が言っていることが本当なのに……」と言っても、残念ながらまったく通用しないのが裁判の世界なのです。

とはいえ、親の生前に、親の通帳を預かっているきょうだいに「通帳を見せてほしい」と言うことは実際には難しいでしょう。

「お前、使い込みしていないか?」と言うようなものですから。

—成年後見人の利用を

もし、自分で通帳のチェックができないのなら、「成年後見制度」を利用することをおすすめします(→ 76 ページ)。

これは、親の財産を管理する成年後見人を指定し、その成年後見人に財産を管理してもらう制度です。成年後見人は裁判所が選任しますが、申し立て時に「候補者」を裁判所に
伝えておくことができます。この「候補者」に「親の財産を管理している子」を挙げることもできます。

成年後見人になりますと、定期的に裁判所に財産状況について報告をしなければいけないことになりますので、使い込みすること自体かなり難しくなりますし、後見人になった子どもとしてもあらぬ疑いをかけられる心配もなくなります。

もちろん、「使い込みしないように成年後見制度を利用しよう」なんて言うと大きなトラブルになるでしょう。ここはあなたの腕の見せ所ですが、実際にはいくら善意でも、親に代わって勝手に契約したり預金を下ろしたりするのは本来違法ですから、それを説明するという方法もあります。

なお、成年後見制度は認知症が進むなど自己判断ができないケースを念頭に置いていますが、それ以外にも判断能力の程度に合わせた制度もありますので、ご安心ください。

ポイント
ほかの相続人の遺産の使い込みを防ぐには、
自分で通帳をチェックするか成年後見制度の利用を。

 

基礎知識▶人間関係・節税・相続放棄
時が解決しない!? 
相続問題の4つのタイムリミットとは?

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「相続問題って、いつまでに解決すればいいの?」とはよくある質問です。
原則として、相続問題の解決には時間は関係ありません。

たとえば父親が亡くなったとき、父親名義の土地があったとします。その土地を誰も使わず、誰の名義にも変えないまま30 年経ち、相続人の1人であった母親もすでに亡くなり、3人の子どものみが残りました。

すると、この土地は誰のものなのでしょうか?
答えは「30 年経った今は3人の共有」です。

このあと、3人の子どもがその子ども(父親から見ると孫)を残してみんな亡くなったとします。その際にはその子どもたち(父親から見ると孫たち)がその土地を共有していることになります。そのような場合にはもはやお互いに交流も少なく「みんな集まって話し合う」こともとても難しくなってしまいます。

こうした「相続問題の世代またぎ」は決して少なくありません。相続問題は時が解決してくれないのです。

—4 つのタイムリミットとは?

とはいえ、相続問題にはいくつかのタイムリミットがあります。
代表的なものには、「相続税納付のタイムリミット」「相続放棄のタイムリミット」です。

まず、「相続税納付のタイムリミット」ですが、「被相続人(亡くなった方)死亡の翌日から10 カ月」です。それまでには相続トラブルが解決していようがいまいが、いったん相続税を納めなければなりません。その期限までに間に合わなければ、高率の延滞税や無申告加算税・重加算税などの大きな負担があります。

次に、「相続放棄のタイムリミット」です。「相続放棄」とは、裁判所で行う「私は相続しない」という手続きで、これは「被相続人の死亡時から3カ月」と定められています。

なお、被相続人が亡くなったことを知らなかった場合は、「被相続人が亡くなったのを知ったときから3カ月以内」に手続きをすることが認められています。

それ以外にも、「遺留分減殺請求のタイムリミット」があります。遺言で自分の相続分が減らされた人が不服を申し立てる期間のことです。被相続人が亡くなったことと自分の遺留分を侵害する遺言があることの両方を知ったときから1年以内に行わなければいけません。

遺留分については次節で詳しくお伝えします。

また、「相続回復請求のタイムリミット」があります。相続人でない者が相続して本来の相続人が相続できなくなってしまったときに、本来の相続人が遺産を取り返す「相続回復請求」という手続きがありますが、これは自分の相続権が侵害されていることを知ったときから5年以内、相続開始から20 年以内に行う必要があります。

これらのタイムリミットを知らなければ、思わぬ損害を受けてしまいますよ。

ポイント
相続問題は時間が過ぎてしまうと、解決方法が
減ってしまったり、不利益を受けたりすることも。

 

基礎知識▶遺言書・人間関係
家族を救うか、火種になるか? 
「遺留分」は「遺言書」よりも強い?

すでに紛争発生の火種となる「特別受益」「寄与分」の問題を説明しましたが、これは、いわば被相続人(父親や母親)の生前に、各相続人(子どもたち)がどのように関わったか、という観点から相続する財産を調整するものです。

ただし、そのような「生前の関わり方」は本来、被相続人(父親・母親)が十分に考慮して遺言書に反映すればいいわけです。そのため、遺言書で「特別受益」や「寄与分」を遺産分割の際には排除することも可能なのです。

つまり、大胆に言うなら、
「遺言書」> 「特別受益」「寄与分」
ということになります。

ただ、相続には「残された家族の生活を支える」という側面もあり、これをまったく無視することはできません。

たとえば、「遺言書に遺産をすべて愛人に相続させる」などと書いてあったとしたら、残された家族は一銭も相続できないということになるでしょうか?

それは道義的にもあんまりですよね。そのため、遺産のうちの一部を残された家族のために残しておく制度があります。その制度によって保証された遺産が「遺留分」です。

つまり、
「遺留分」> 「遺言書」
となるわけです。

ただ、遺留分には4つの注意点があります。

遺留分は主張しないと受け取れない。
あくまでも原則は「自分の財産は自由に処分」です。きちんと自分の遺留分を請求しなければ遺言書どおりの分け方になります。

遺留分の割合は、相続人が誰かによって変わる。
遺留分の割合は通常、「遺産の2分の1」です。ただ、相続人が被相続人の直系尊属(親
や祖父母など)のみの場合は、「遺産の3分の1」です。

遺留分が主張できるのは配偶者(夫・妻)、直系尊属(親・祖父母)、直系卑属(子・孫)で、「被相続人のきょうだい」は遺留分を主張することはできない。
「残された家族の生活を支える」という観点が薄いということでしょう。

遺留分を請求するには1年の期限がある。
前節で説明したとおり、相続開始と遺留分を侵害する遺言書があることを知ってから1 年以内に、遺言書によって財産を相続した者に対して請求しなければなりません。

ポイント
1年以内であれば、いつでも家族には
相続を受ける権利がある。

 

基礎知識▶人間関係・事業
どうすれば子どもから親へ
「相続問題」を話し出せるのか?

「うちも相続対策をしておかなければならないか……」と思ったのが、子どもに相続する親の側であれば問題ありません。しかし、実際には「相続対策をしておきたい!」と危機感を持つのは、相続をする子どもの側、とくに「親の相続」が遠い未来の話ではないことを実感しつつある40 代後半~ 60 代前半の子どもの側であることがほとんどです。

しかし、親に「相続対策はどうするの?」とは聞きにくいというのも人情です。
さて、どうしたらいいでしょうか?

—事業をしている親に相続の話をするには?

まず、親が事業をしている場合を考えてみます。

そもそも経営者は「自分のあとはどうなるのか?」を常に心配しています。ですから、事業を継ぐ子どものほうから、正面から堂々と「私の何が心配か?」を聞いてください。

親の心配は子どもから見ると的外れだったり、古い考えだったりするかもしれませんが、親がこれまで苦労して育ててきた思い入れのある事業なのだから、親の思いを否定しないでください。議論や論破することではなく、親を安心させることが目的なのです。

そのうえで、「ハッピーリタイヤライフ」を考えてもらってください。事業から自由になったら親は何がしたいのか? 旅行? 趣味? なんでもいいのです。親自身では企画しないような旅行など、事業とは異なった「楽しみ」「生き甲斐」をプレゼントしてはいかがでしょう?

ここまでくれば事業に関してどのように承継するかはすんなり決まっていきます。

—普通の親に相続の話をするには?

では、親が事業をしていない場合はどうでしょうか?

こちらは事業の継承問題がないので、最初から親の「ハッピーリタイヤライフ」を思い描いてもらい、プレゼントすることから始めましょう。その次に、親が一番心配していそうなことを考えてみてください。

自宅をどうするのかということでしょうか?

子ども同士で仲良くすることでしょうか?
どの子の行く末を一番心配しているのでしょうか?

それを正面から話し合い、どのように解決するかを話し合うことです。あとは、自然に残りの財産をどうするかの話になります。

しかし、「どうやって親の遺産を分けるか」という側面しか見ていないと間違います。

財産を残す親にとっては、財産よりも「自分の死後子どもたちが幸せに暮らしていけるのか?」が心配なのです。そこに「親の財産をどう分けよう?」という観点だけでアプローチしても、「こいつは金だけが目的か……」という嫌悪感を持たれるだけです。

ぜひ、自分の親は何を心配しているのかをよく聞いてあげてください。その過程で、相互理解が深まり、〝争族〟を回避できる相続対策を考えることができます。

ポイント
相続の話を親とするときには、
子どもの立場ではなく親の立場で考える。

嵩原安三郎著『相続でもめたくなければ○○しなさい!』より抜粋

【書籍紹介~目次】

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『相続でもめたくなければ○○しなさい!』

 

あなたにとっての○○を見つけてください――まえがき
あなたも確認!“争族”危険度チェック  

第1章 相続の基礎知識を得て争族の火種を消しなさい!
知らないと損する! 不幸のきっかけは知識不足が6割?
相続人は誰? 必ず相続できる人と順位で相続できる人 
遺言書がなかった場合、誰がどれだけ相続する?「法定相続分」の基礎知識 
紛争発生の三大理由「特別受益」「寄与分」「遺産の使い込み」とは? 
相続トラブルになるケース①「特別受益」とは? 
相続トラブルになるケース②「寄与分」とは? 
相続トラブルになるケース③「遺産の使い込み」とは? 
時が解決しない!? 相続問題の4つのタイムリミットとは? 
家族を救うか、火種になるか?「遺留分」は「遺言書」よりも強い? 
どうすれば子どもから親へ「相続問題」を話し出せるのか?

第2章 遺言書で失敗したくなければメンテナンスをしなさい!
「親の遺志」は遺言「書」以外はまったく意味がない? 
「遺言書を作成すれば大丈夫」にだまされるな! 
遺言書の偽造・悪用①別人が書いた遺言書は見破れるか? 
遺言書の偽造・悪用②無理矢理書かされた遺言書は見破れるか? 
遺言書の偽造・悪用③公正証書遺言なら悪用できないのか? 
遺言書の悪用を防ぐ2つの方法とは?
遺言書を残すなら「自筆証書遺言」「公正証書遺言」どっち? 
遺言を残すなら「遺言書」「エンディングノート」どっち? 
とりあえず遺言書には財産のことだけ書いておけばOK?

第3章 相続貧乏になりたくなければ節税と贈与の落とし穴に気づきなさい!
「相続税の大増税」ってどういうこと? 私に影響あるの? 
相続税の大増税で「相続貧乏」が大量発生ってホント?
「相続税」ってどんなもの? 誰が払うの?
相続税の計算方法は? 私のケースでもかかるの?
「相続」と「贈与」はどう違う?「相続は死後、贈与は生前」のウソ
「相続税」を回避するための「贈与」の利用とは?
公平に贈与すればきょうだいは納得? 意外と見落とす贈与の落とし穴
贈与するなら息子か? その奥さんか? または孫か?
上がりだした上場株で相続税対策ができるって本当?
生前にお墓や仏壇を用意するのは有効な節税手段!
実家の相続でも相続税がかかる?「同居」の有無が節税のカギ!
相続問題の先送り?「二次相続」を考えた相続対策、考えない相続

第4章 「相続の救世主」生命保険の受取人や加入を検討しなさい!
〝急なこと〟が起こる前に生命保険の使い道を考えておこう
「相続の救世主」生命保険の利用法とは?
今すぐ確認! 生命保険は設定の仕方でどう変わる?
「隠し子」「愛人」…家族以外の大切な人への対策は万全?
応用自在!? こんなにある! 新しい「生命保険信託」活用法 
最も危険な相続「遺産は実家だけ」の場合で活躍する生命保険 

第5章 相続のやっかい者!? 不動産の価格と利用法を確かめなさい!
不動産の相続で不幸になる子どもが続出の理由とは?
実家の土地・建物はどうやって分ければいい? 
相続税を計算するときの不動産の価格は?
不動産を相続で「分ける」ときも「路線価」「固定資産税評価額」でいいの? 
「収益物件」を残して子どもが喜ぶと思ったら大間違い!?
事業に使用している不動産はどうやって相続する?
中小企業の後継者問題を解決する「経営承継円滑化法」の利用法

第6章 相続放棄をしたいなら親の借金を調べなさい!
「相続したくない」ならいつまでに決めればいい?
遺産を使ってしまうと相続放棄ができなくなる?
相続放棄したあとに必ずしておくこととは?
「あとで借金が出てきたらどうしよう…」対策はあるの?
連帯保証をほうっておいて勝手に死ぬな!
マイナスの財産しかない場合、子どもに何も残せないのか?

第7章 「専門家」にだまされたくなければ彼らのキャッシュポイントを見抜きなさい!
あなたを食いものにする相続ビジネスの「専門家」たち
銀行・不動産業者の「相続させるなら現金より不動産が得!」は本当か?
「税」のみから相続を見る税理士に不動産の相続を頼んで大失敗!
銀行の「遺言信託」って本当に信用できるの?
遺品の横領が頻発! 遺品整理の業者選びは慎重に 
専門家すべてが信用できないなら、誰に相談すればいいのか?

第8章 相続でもめたくなければ妻・夫・孫・影の薄い人に注意しなさい!

「うちにかぎって」は危険! 不幸のきっかけは人間関係が4割
怖いのは「仲のいいきょうだい」より「その奥さん、旦那さん」 
相続の際にトラブルメーカーになりやすい妻や夫とは?
「暴力息子・放蕩娘に相続させない方法」を知っていますか?
相続で豹変しそうなのは「離れて暮らす」「近くに暮らす」きょうだいどっち?
「あなたの知らないきょうだい」も気にかけて! 
きょうだいと音信不通の場合は要注意!
子どもがいなければ相続問題は発生しない? 
介護は一手に引き受けるべき? きょうだいで分担しておくべき? 

ぜひ、いずれかの「安心」を得てください――あとがき  

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